宴を使用したシナリオパート制作フロー

宴を使用したシナリオパート制作フロー

はじめに

はじめまして、第一事業部 プランナーの伊勢と申します。
「かみながしじま~輪廻の巫女~」の世界観・キャラクター設定、シナリオの担当をしています。
今回は「かみながしじま~輪廻の巫女~」のシナリオパート制作フローについて、Unityプラグイン「宴」とあわせて簡単に紹介いたします。

Unity用ビジュアルノベルツール「宴」

Unity用ビジュアルノベルツール「宴」
「宴」は、Unityでビジュアルノベルを作成するためのツールです。
複雑なスクリプト知識を必要とせず、エクセル上でコマンドを指定する形で簡単にビジュアルノベルを作れます。
多種多様なコマンドが用意されており、基本的な演出は一通り実現できるようになっています。

シナリオパート制作

以降では「かみながしじま~輪廻の巫女~」でのシナリオパート制作フローを簡単に紹介します。

プロット

制作した世界観やキャラクター設定を元に、全10話のプロットを切ります。
本作品はキャラクターがそれぞれループする話であるため、複数のキャラクターを跨いでの調整が必要でした。
また、5話・10話読破時点のアイテム報酬にあわせて山場ができるようにもっていくことも必要となりました。

プロットの時点でもある程度の会話文を含める
最終的なテキストの全体像、イメージが想像しやすい
レビュワーとの認識齟齬も起きにくい

各話について、短めの感想文を添えてみる
「へぇ」→「なるほど」→「えっ?」→「ああ!」→「そっか~」レベルで良い
流れができているか確認できる

新たな設定が必要であればこの時点で作る
シナリオテキストを書きながらだと整合性がとりにくく、時間もかかりかなりしんどい!

シナリオテキスト

プロットを元にテキストを書き起こしていきます。
どんな媒体であっても一画面に表示できるテキストには限界があるため、文字数に気を配る必要があります。
本作品では以下のような制限に沿って書いています。
・一画面に表示させるテキスト行:3行
・一行の最大文字数:30文字
また、この後のスクリプトデータ作業をふまえ、スプレッドシート上で執筆を行いました。
※Excelでも問題ないです

できるだけ簡潔に、短い文章で書く
無駄な文章を書かない
冗長に書くと、読み手が疲れる
もし判断が付かない場合は、その文を削除した際に前後がつながっているかで判断できる

表記ゆれに気をつける
表記がゆれなく統一されていると、まとまりができ美しく見える
※個性としての一人称や特別な意味合いをもつ言葉はこの限りではない

問いかけに対して、思考を挟まない
キャラクターA「問いかけ」
キャラクターB(思考)
キャラクターB「回答」
上記のようにしてしまうと、読み手が(どんな質問だったか?)と感じてしまう

スクリプト

シナリオテキストの準備ができたら、ビジュアルノベルとして再生できるようデータ化します。
宴を使用し、エクセル上でのコマンド指定ベースで作成します。
※すでにunityにインポートされているものとします。
※インポートの詳細および具体的な作成、操作方法は公式サイトをご覧ください。

主に必要な情報は、以下の通りです。
これらを、宴のコマンドルールに従ってExcel上に記載していきます。

・何を書くか:シナリオテキスト
・何を出すか:背景画像、キャラクター画像、キャラクターのリアクション画像
・何を鳴らすか:BGM、SE、キャラクターボイス

シナリオパートイメージ図
天音みこストーリー1話
天音みこストーリー1話

宴を利用したスクリプト記載例

実際にExcel上で何を指定するか、Excel上の各シートに沿って簡単に紹介します。

Character シート
キャラクターの立ち絵を設定します。
このシートで画像のパスをキャラクター名に登録することで、実際のスクリプト記入の際にキャラクターの名前をタグのようにつかって、画像を指定することができます。
例として「かみながしじま~輪廻の巫女~」の天音みこのストーリー1話では、天音みこと不思議な子供というキャラクターが登場するため、2人分のパスを記載します。
立ち絵に表情差分などあれば、別画像として記載します。
※以降の図では、実際には「File name」列に画像のパスを指定しております。

キャラクターシート
Texture シート
キャラクター以外の画像を登録するシートです。
使用する背景画像と、キャラクター立ち絵の横に出すリアクション画像のパスを記載します。
テクスチャシート

Layer シート
キャラクターや画像を出す位置を、タグとして登録することができます。
基本的な位置である「左、中央、右」
下からスライドインさせる際に使う「下」
背景画像を表示する起点となる位置を記載します。
レイヤーシート

Sound シート
使用するBGMやSEがあればここに記載します。
サウンドシート

Start シート
作業メインとなるシートです。
複雑な操作はなく、作成したシナリオテキスト通りに指定するだけになります。
主に、これまでのシートで登録したタグを指定し、Textの行にセリフや地の文を記載していく形になります。

下の図は、天音みこのストーリー1話の冒頭~不思議な子供がでてきたところまでのスクリプト例となります。
是非、本編と見比べながら読んでみてくださいね。
スクリプト記載例 天音みこ1話

ボイス、SEなど音素材は鳴らしすぎない
頻繁に鳴りすぎるとテキストに集中できない
特に注目してほしいセリフなどに付けることで緩急をつける

読み手が音声を切っている状態でも状況が伝わるようにする
キャラクターが怪我をするならば、赤いフラッシュ入れたり、画面をゆらしたりする
スキルを使った際は、スキルエフェクトと同系統の色フラッシュを入れるなど

タップ数が少なくなるような工夫をする
キャラクターが喋る順番をふまえ、極力立ち絵切り替えが少なくなるようにする
例:A→B→C→Bの順番にしゃべるケース
最初の画面:AとB配置 AとBが喋る
次の画面:AをCに切り替えてCが喋る→そのままBが喋る

ブラッシュアップ

Unityの画面、実際のスマートフォンでの画面両方で何度も再生確認しながら演出やテキストの改善を行います。
この工程の時間をかけられればかけられるほどクオリティがアップします。
また、書き手のみで確認を行うと、結構見落としがありがちです。
他のかたにも確認していただき、フィードバックをもらうことが大事です。

誤字・脱字・衍字や表記ゆれがないか
場面や設定、キャラクターの心情についての説明不足がないか、整合性がとれているか
無駄な情報を書いていないか
テンポよく読み進められるか
演出は過不足なく適切か

宴を利用してみた所感

宴を利用することで、ストレスなく非常に簡単にシナリオパートを制作することができました。
エラーも全てunity上のログで確認できるため、修正も容易という印象があります。
前に所属していたプロジェクトではもう少し言語ベースな方法でスクリプトデータを作成していましたので、その時と比較しつつ宴を使うことのメリットを書いてみます。
あくまで私が本プロジェクトで使用した際の、というものなので参考程度にお願いします!

メリット
・作業のほとんどがコピー&ペーストのため、制作が簡単である
・エラーがあってもunity上のログで出るため修正が容易である
・基本的な演出機能はコマンドで揃っているため、ストレスなく設定可能である
・コマンドかつExcelベースのため制作中の視認性が高い

おわりに

今回は「かみながしじま~輪廻の巫女~」のシナリオパート制作フローについて、簡単ではありますがご紹介させていただきました。
宴を利用することで、誰でもビジュアルノベルが制作できる時代です。興味があるかたは挑戦してみてください。
また機会がありましたら音声についてなど別の話題をご紹介できたらと思います!

「かみながしじま~輪廻の巫女~」では、各キャラクターの1話はインストール後すぐに読めるようになっています。ぜひ、読んでみてくださいね!

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