最高のゲーム体験を届ける「最後の砦」 —— デバッグの仕事紹介

最高のゲーム体験を届ける「最後の砦」 —— デバッグの仕事紹介

はじめに

こんにちは!
Aiming第二事業部、品質管理課です。

皆さんは、ゲームをプレイしていて「あれ? この画面から進まなくなった…」「アイテムが使えないぞ?」といった現象に出会ったことはありますか?

私たちはゲーム開発において「デバッグ」を担当しています。「デバッグ」とはプレイヤーの皆さんに最高のゲーム体験を届けるため、そうした「あれ?」をリリース前に徹底的に洗い出し、開発チームと連携して修正、確認をする業務です。
「デバッグ」業務を行う私たちは「品質の門番」でもあります。

今回は、品質管理課が日々どのような視点で、どのような仕事をしているのかをご紹介できればと思います。

なぜデバッグは「最後の砦」と呼ばれるのか?

デバッグ業務はゲーム開発において、「最後の砦」と呼ばれることがあります。

なぜなら私たちの作業工程より後ろには制作工程が存在せず、
これより後は皆さんのお手元に届くだけ、そんな立ち位置に私たちは居ます。
つまりゲームの品質に関わる問題を発見できる最終段階になるからです。

私たちが品質の中で特に重視していること、
それは第一に、プレイヤーの皆さんの「最高のゲーム体験」を守ることです。 どれほど素晴らしい世界観やストーリーも、たった一つのバグ(例えば「フリーズする」「セーブデータが消える」)が、その没入感を一瞬で奪い、プレイヤーを現実に引き戻してしまいます。

第二に、開発チーム全員の「情熱の結晶」を守ることです。 バグはプレイヤーの信頼を損ねるだけでなく、開発者たちが注ぎ込んだ膨大な時間と努力が「作品」として正しく評価されなくなる原因にもなります。
私たちは、プレイヤーの貴重な時間を守り、開発チームの創造物を完璧な状態でお届けする「品質の門番」として、決してバグを見逃すわけにはいかないのです。

デバッグ=「バグ探し」だけではない

「デバッグ」と聞くと、ひたすらゲームをプレイしてバグ(不具合)を見つける仕事、というイメージが強いかもしれません。もちろんそれも重要な業務の一つですが、私たちの役割はそれだけではありません。
私たちのミッションは、「ゲームが面白さも含めて『仕様書通り』に、そして『プレイヤーの期待通り』に動作するかを保証すること」です。

・仕様書通りか?(例:この剣は攻撃力10と書いてあるが、本当に期待通りのダメージが出るか?)
・プレイヤーの期待通りか?(例:このボスは強すぎ/弱すぎないか?  操作は直感的か?)
・予期せぬ動作をしないか?(例:特定の操作をするとフリーズしないか?  データが壊れないか?)

これらを確認するために、私たちは「テスト」を設計し、実行し、分析します。

具体的な仕事の流れ

品質管理課は、開発が佳境に入ると、本格的に開発チームと一体となって動きます。

① テスト計画:「いつ」「何を」「どう」テストするか

まずはゲームの仕様書や開発スケジュールに基づき、「どの機能を」「いつまでに」「どのような方法で」テストするかの計画を立てます。

・網羅的テスト: 全ての機能、アイテム、ステージが仕様通りか、しらみつぶしに確認します。
・回帰テスト (リグレッション): バグ修正や機能追加によって、以前は動いていた別の場所に新たなバグ(デグレード)が生まれていないかを確認します。
・探索的テスト: 「プレイヤーがやりそうな、ちょっと意地悪な操作」や「開発者が想定していなかった組み合わせ」を試します。 あえて説明書を読まずにプレイしてみる、などもここに含まれます。

② テスト実行:「プレイヤーの目」でプレイする

計画に基づき、テストを実行します。ここで重要なのは、「開発者の視点」と「プレイヤーの視点」の両方を持つことです。

開発チームはどういう動作をするかを定義しているため「こう動くはず」という前提でゲームを見てしまいます。私たちはその前提をあえて疑い「もしこんな操作をしたら?」と、初めてゲームに触れるユーザーの気持ちになって、あらゆる可能性を試します。

③ バグ報告:正確な情報を開発者へ

バグを発見したら、それを開発チームに報告します。ここがデバッグの腕の見せ所です。

ダメな報告例: 「ゲームがフリーズしました」

良い報告例:
・件名: 【フリーズ】ステージ1のボス「〇〇」戦で、特定スキル「△△」使用直後にポーズすると100%フリーズ
・再現手順:
 1.ステージ1のボス戦を開始する
 2.プレイヤーキャラがスキル「△△」を使用するエフェクト中に
 3.STARTボタンを押し、ポーズメニューを開く
・結果: ゲームがフリーズし、操作不能になる。
・期待される結果: ポーズメニューが正常に表示される。

このように、「いつ」「どこで」「どうしたら」「どうなった」かを簡潔かつ正確に伝えることで、開発者は最短距離で原因を特定し、修正作業に入ることができます。バグの「再現性」の確認を取ることは、非常に重要な工程になります。

④ 修正確認と「回帰テスト」:品質のキャッチボール

バグを報告したら終わり、ではありません。

開発チームから「修正完了!」の連絡をもらったら、私たちの再チェックが始まります。
修正確認: まず、報告したバグが本当に直っているか、同じ手順で確認します。

回帰テスト (リグレッション): さらに重要なのが、「その修正によって、今まで正常だった別の場所が壊れていないか?」を確認する作業です。バグ修正の影響で新たなバグ(デグレード)が生まれることは、実は頻繁にあります。

この「発見 → 報告 → 修正 → 修正確認&回帰テスト」という地道なサイクルを何度も繰り返すことで、ゲームの品質は着実に高まっていきます。

デバッグの「面白さ」と「やりがい」

地道な作業も多いデバッグですが、大きなやりがいがあります。

・市場に出る前のゲームをプレイできる:まだ未完成部分が多い市場に出る前の作品をプレイできるのは他では得られない体験です。

・誰よりも深くゲームを知れる: 仕様書を読み込み、隅々までプレイするため、そのゲームについては開発者と同じか、それ以上に詳しくなります。隠し要素を一番に見つけるのも、私たちかもしれません。

・「見つけた!」という達成感: 開発者も見抜けなかった重大なバグや、複雑な手順でしか発生しないレアなバグを発見した時の達成感は格別です。

・ゲームが良くなっていく実感: 私たちの報告によってバグが修正され、UI(操作感)が改善されていく。製品版として世に出ていくゲームの品質が、自分たちの手で日々向上していく過程を間近で見られるのは、この仕事ならではの醍醐味です。単にゲームをプレイするだけでは得られない体験と言えるでしょう。

・「ありがとう」の一言: 開発チームから「あのバグ、見つけてくれて助かったよ!」と言われた時は、チームの一員として貢献できたことを実感します。

終わりに

皆さんにとって「良いゲーム」とは何でしょうか?

それはきっと、時間を忘れて没頭できる快適な操作感や、理不尽さを感じさせない絶妙な難易度、そして安心して浸れる世界の上に成り立っているはずです。
私たち品質管理課は「面白さの土台」となるその“品質”という名の信頼を守り続けるチームです。

これからも皆さんに最高の体験をお届けできるよう、私たちは今日も「最後の砦」としてゲームと向き合い続けます。