オルガができるまで【イラスト制作フロー紹介】
おつかれさまです!Aimingアートディレクターのヒロタです!
ここのところ急にやる気を出してきているAiming開発者ブログ。今回はイラスト作成の各ステップとその時にどんなことを考えてるかをご紹介しようと思います。
ご紹介するキャラクターの名前はオルガ、とあるゲームに登場する予定のキャラクターで、機械技術に優れた国家の兵器開発者の女の子です。ゲーム内ではサブ的なキャラクターとなり制作コストもあまり掛けられませんでしたが、設計ベースで作成するイラストのフローの参考になればと思います。
ステップ 1 -設計-
キャラクターを作るときはまず、設計ありきです。
ゲームに登場するすべてのキャラクターは独自のロール(役割)を持っています。その為、イラストを描く前段階としてキャラクター設計が行われます。
ストーリーが重視されないゲームでは設計の部分が簡略化されることもありますが、このオルガが登場するゲームはストーリーが重要な要素となっているため、キャラクターの設計を軽視することはできません。サブキャラクターとはいえ、ロールに合わせた設計が必須となります。
今回のオルガの設計はこんな感じでした。
オルガ 18歳 女 164cm
軍事国家に属するマッドサイエンティスト気味の兵器開発員
道徳心がなく機械いじりに没頭する
人間にはあまり興味がないが機械を愛しており、技術の存続のためには自らの命を捧げてもいいという熱い思いを持っている。
着崩したツナギとたくさんの工具を持ち歩いており、おしゃれなどには興味がない。
巨大パイプレンチと銃を組み合わせて自ら制作したオリジナル武器を使用する。遠距離は銃で攻撃し、近距離の敵はレンチでぶっ叩く。
(本当は国家の説明やキャラクターのエピソード、セリフや口癖などもっと細かい設定があるのですが、機密に抵触してしまうのでカットしてあります!すいません!)
また、類似キャラクターなどもこの段階でピックアップしておくとデザインがしやすくなりますね。
ここで大事なのは、物語や世界観の中でのキャラクターのロールの明確化です。性格や目的だけではなくその原因となる生い立ちや境遇、エピソードなどを設定することで、キャラクターを構成する要素のデザインに整合性をもたせる準備が整います。
見栄えや可愛さだけに目を向けてしまうと、世界観との乖離を感じさせてしまうことになりかねません。
ステップ 2 -idea-
キャラの設計を基にいくつかのアイデアを出していきます。Aimingは台湾にも支社があり、主にデザインの業務を担ってくれています。このオルガも台湾スタジオのイラストレーターがデザインを担当しました。この時、コンペのように複数のイラストレーターでアイデア出しを行うこともあります。
パターンは幅広くあったほうが良いですが、設定の枠からはみ出しすぎないように気をつけます。あくまでキャラクター設計を再現するイラストであるべきです。設計の再現が難しい場合は、設計に新たな設定項目を増やすこともあります。イラストレーターには世界観への深い理解が求められます。
アイデア次第ではありますが、上がってきたデザインのそれぞれの要素を組み合わせて新たなパターンを作ることもよくあります。いいとこ取りですね。
この段階ではディテールではなく、全体的にパッとみてキャラクターのイメージに近いか、見栄えするか、可愛いかなどの直感的な部分を大切にして選択することが多いです。ディテールは後々調整していくことはできるけど、刺さるか刺さらないか、魅力的かどうかはあとで調整するのは難しいからですね。
ちなみにこの4つのアイデアの中でどれが採用されたかというと、Aの赤髪のキャラクターです。イメージにぴったりで、即決だったことを覚えています。
ステップ 3 -発展-
大まかなデザインが決まったら、そのデザインを発展させていくことになります。
例えばでいうと、
このように服や髪型をアレンジしてみたりもします。
赤髪のオルガで進行していましたが、服装のアイデアがいくつか出てきたためパターンを作ってもらいました。どれもかわいいデザインに仕上がってきましたが、上半身をスッキリさせてしまうと清潔感や知的な印象が出てきてしまったためBやCの案はNGとなりました。また片足だけニーソックスのデザインが特徴的で可愛かったので、結果的には元のデザインに落ち着きました。
他にも、
武器の詳細をデザインしたりもします。
オルガは機械に強い兵器開発員のため、その武器にもこだわりが感じられます。近接の場合はパイプレンチでぶん殴り、遠距離では銃で攻撃できる可変のギミックが特徴的な面白い武器ですね。
こういった武器や乗り物などをデザインする場合は、その素材やテクノロジーのレベルやその出処、可動するならその仕組みや動力も考えながら進めます。そうしないと世界観にそぐわないトンデモキャラが生まれかねません。
鉄製で複雑な形状をしていたら製鉄やその加工の技術があることがわかりますし、火薬の有無や、蒸気機関やエンジンや電力など、テクノロジーのレベルをはかる要素はたくさんあります。世界観にマッチした仕組みをデザインに織り込むことも大切なことです。
ここで難しいのは、設計に引っ張られて現実的にデザインしすぎることによって面白みがなくなってしまうことです。世界観への没入を削ぐことなく見栄え良く魅力的な嘘をつくという、【適度なぶっ飛び具合】でバランスを取ることに気をつけながら進めていきます。
オルガの武器もその大きさといい構造といいちょっと現実離れしていますが、女の子のキャラクターが無骨で大きな武器を持ってるのは単純にかっこいいですよね!
ステップ 4 -ゴールイメージ-
ここまでくれば、キャラクターデザインとしてはほぼ完成です。ここからはイラストとして仕上げるための手順を進めていきます。
まずはポーズを決めていきます。
このゲームでは、キャラクターはカードのような形態では出てきません。イラストとLive2D、そして3Dモデルとしてゲーム内に登場します。そのため、カード枠や構図はあまり考慮しなくても大丈夫でした。
ということで、武器との絡みも考えながらポーズアイデアを出してもらいました。
どれも素敵なポーズで悩むところです。BやCは武器の持ち方も自然で、立ち止まっているポーズなのでゲーム内でも使いやすそうですね。
ただ、今回はAを選択しました。動きがあってイラストを魅力的に見せてくれるし、特徴的な武器を使っている方がキャラクター性を伝えやすいことが理由です。BやCは武器よりもオルガが自分に自信を持っていたり挑発的に見えてしまうという懸念を感じたのも理由として挙げられます。
オルガは技術屋ですので、自分の作ったものにだけ自信を持てているというキャラクター設計を表現できるのではないかと思ったのです。
ステップ 5 -仕上げ-
ポーズが決まったら、イラストとして仕上げていく工程に入ります。
今回、ここからはAiming東京本社のデザイナーが仕上げてくれました。
まずはラフから線画へ
微調整を重ねた結果、かわいく仕上がりました!
最後に3Dモデル作成時の資料としての設定画を作って完了です。
まとめ
ということで、今回はとあるゲームに登場するオルガが誕生するまでの各ステップとその時何を考えていたかを紹介させていただきました。制作フローとその時考えることはその時々で違いますし、ケースに合わせて最適なフローを選択しなければなりません。今回はその一例として見ていただければと思います。
イラストを描く=仕上げるということはもちろん大事で、個々のスキルの見せ所でもあります。今回のオルガも素晴らしい出来栄えです。でもそれだけではなく、イラストを描く前段階の準備にも多くの時間を掛けているということが分かっていただけたのではないでしょうか。このゲームはストーリーや世界観を重視していたため、より気をつけながら進行しました。
少しでも参考になったら幸いです。
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