SubstanceDesignerのお話

SubstanceDesignerのお話

こんにちは。デザイナーの兵頭です。
業務では比較的色々な分野を担当しますが、ここ2,3年ほどはエフェクトを中心に担当しています。
今回は、私が個人的に行っているSubstanceDesignerの学習についてご紹介します。

SubstanceDesignerとは

皆さん、SubstanceDesignerというソフトはご存知でしょうか。

SubstanceDesigner-ボーンデジタル
ボーンデジタル様の商品ページより
“PBRテクスチャ作成の業界スタンダードツール。テクスチャ作成専用につくられた唯一のソフトウェアソリューション。”

color,normal,metalness,roughness等のテクスチャを一括で作成し、書き出すことができるソフトです。基本工程としてはノードをつなぎ合わせて作ります。ボーンデジタル様のページにもある通り、今やスタンダードと言っても過言ではないレベルで普及しています。基本的にはマテリアルを制作できるソフトですが、プロシージャルなエフェクト用のオーラテクスチャや地割れテクスチャを作成することもできます。
最近ですとカプコンエフェクト公式様が積極的に発信されていますね。私も紹介されているジェネレーターを目コピして練習したりしています。

デニム生地を作ってみた

今回は、SubstanceDesignerでプロシージャルなデニムマテリアルを制作した話をします。先日布が破れるジェネレーターを制作したのですが、その時はなんとなく布っぽいものといった漠然としたイメージでした。より具体的な素材でアプローチしなければ作りこみが難しいということもあり、表情も豊かで面白そうなデニム素材を選びました。

完成とした状態がこちらになります

SubstanceDesignerで作成する強みは何と言っても非破壊、プロシージャルであることです。
こちらのマテリアルは
・タテ糸の色
・ヨコ糸の色
・ムラになっている色およびその濃さ
・一定範囲あたりの織目の密度
などをパラメータとして調整することができ、SubstancePainter上での色落ちをペイントすることもできるようになっています。

こちらがSubstanceDesignerの基本的な画面になります。
中央の路線図のような部分がノードを配置してつなげるウィンドウになっています。

もうすこし拡大するとこのような感じになっています。
ノードの一つ一つが機能を持っており、どんどんつなげていくことで複雑な表現が可能になります。

今回は割愛しますが、SubstanceDesignerの真価は姉妹ソフトであるSubstancePainterとの連携にあります。興味がありましたら調べてみてください。

そもそもデニム生地とは何なのか

さて、戦をするにはまずは敵を知るところからです。そもそもデニムとはどういうものを指すのでしょうか。

“デニム(denim)生地は、10番手以上のタテ糸をインディゴによって染色し、ヨコ糸を未晒し糸(染色加工をしていない糸)で綾織りにした、素材が綿の厚地織布。生地の裏側に白いヨコ糸が多く出るのが特徴。ジーンズに使用されることが多いが、鞄などにも使用される。 ”
wikipediaより

なるほどなー!青くてムラがあるとは思ってましたが、ヨコ糸は染色されていないんですね。知りませんでした。また織り方は綾織りとのこと。織り方についてもう少し調べてみましょう。

基本に戻って考えてみる。織物の三原組織とは? | ApparelX News
“まず織物というのはたて糸とよこ糸を直角に交差させ作った布地の事をいいます。
その中で最も基本的なものを三原組織といい、平織り、綾織り(斜文織り)、朱子織りの3つを
織物の三原組織といます。”

なるほど…織り方にもいろいろなものがあるけど、デニム生地は綾織で織られているのですね。綾織はヨコ糸よりもタテ糸が表に多く出る織り方であると。
ははあ、だからタテ糸しか染まっていなくても青く見えるし、逆に裏側はヨコ糸が多く出るから白いんですね。擦り切れて破れたときにヨコ糸が残るのもそういった理由な気がしますね。
ざっくりとではありますが敵を知ることができました。そろそろ実際に手を動かしてみましょう。

構造を再現する

綾織の構造はわかったので、SubstanceDesigner上で再現してみます。が、しかし綾織は少々複雑…まずは平織でどういったアプローチをするのかをご紹介します。

糸の基本に使うのはこちらのshapeノード。単純な四角形や円、ぼかしのかかった円など基本的な形を取得できます。
このノードを…

こうして…

こうじゃ

ね、簡単でしょ!
チュートリアルではないので細かな説明は避けさせていただきますが、このように基本的な形状を組み合わせたり引き算したりして目的の形状を作っていきます。
デニムは綾織なので少し工夫は必要ですが、考え方は大体同じです。

生地らしさの表現

そうして一旦出来上がった綾織の状態がこちらです。

タイリングを増やすと割とそれっぽく見える気がします。ただ、これだけでは布っぽさが足りないので、いろいろな要素を足していきます。
繊維感、明度のランダム感のために毛のようなノイズパターンを合成したり

自然物を利用しているらしいムラ感をだすために雲っぽいノイズパターンを合成したり

さらに毛のような別のノイズパターンを合成したり…

そして色も付けたのがこちらになります。

だいぶそれらしくなってきた気がします。冒頭の画像で、ノードが複雑に絡み合っているように見えたかもしれませんが、このように少しずつ調整しているとあっという間に数が多くなってしまいます。
もちろん多ければいいわけではないので、無駄がないかたまに振り返ってみたりしています。

デニムならではの表情

ここからはデニムならではのノイズや表情を追加していこうと思います。
まずは、縦に入る白いノイズ。あれが何なのかいまいち確証を得られなかったんですが、タテ糸の色落ちの影響だと思います。もしかしたら違うかも…
このようなパターンを作成して

重ねます

また一歩近づいた気がします。わくわくしてきますね。
この白いノイズの濃さや量も、後から調整できるようになっています。

最後はデニムのだいご味であろう色落ち表現です。原理としてはタテ糸が擦れることでインディゴが落ちる、ヨコ糸の露出が上がるということだと思われます。
なので、ヨコ糸と同じ色をスクリーンで乗せることにしました。

おお…な、なんだかそれっぽい気がする…!ちょっと自画自賛が過ぎますが、出来上がってくるとテンションが上がってくるのは自然の摂理ですね。
さらにチェック用に波打った法線マップを追加して、その高いところだけ色落ちが入るようにしました。

雰囲気が出ていい感じですね。これで完成としたいと思います。
チェックのために決まった形で色落ちを確認しましたが、実際は冒頭の動画のようにSubstancePainter上で専用マスクをペイントすることで色落ち表現を描きこめるようになっています。
これで様々なテイストのジーンズを作ることができます(ややニッチですが)。

終わりに

このマテリアルは完全に趣味というか学習目的での制作ですが、SubstanceDesignerによるテクスチャ作成はエフェクト用途にも活用できたりと幅が広いです。
業務で使っていない技術も日頃から積み上げて行って、業務に活かせるようにしたいですね!
ありがとうございました!